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ペ・ヨンジュン 過去への旅路 7・8

2016’05.31・Tue

ペ・ヨンジュン 過去への旅路 7・8

第7回 大ケガを乗り越えて

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『愛の挨拶』で一躍人気俳優となったペ・ヨンジュン。
単発ドラマの『海風』を経て、若者たちの野望と友情を赤裸々に描いた『若者のひなた』に出演。
ベテラン俳優に囲まれ、緊張して夜も眠れないほどの重圧の中で、必死に自分の役割をこなしきった。
続いて、イ・ヨンエと共演した『パパ』で、まだ23歳なのに、離婚して子供を育てる役に扮した。
10歳くらい上の俳優が演じるような役に果敢に挑戦したのだ。
しかし、激務の撮影で疲労困憊となり入院を余儀なくされたが、話に尾ひれが付いて引退騒動まで起こってしまった。
その後休養を取り、今度はタフガイのイメージを加えて『初恋』に出演。
メガネをはずし、たくましい姿を披露した。

自分の至らなさを痛感

ペ・ヨンジュンの連続ドラマ出演4作目となった『初恋』は、65・8%という歴代最高視聴率を記録して大成功のうちに終了した。

けれど、ペ・ヨンジュンは単純に喜んでばかりはいられなかった。
彼は「惜しい気持ちが強い」と正直に告白する。

「空前の視聴率を記録して私に多大な人気を与えてくれたドラマですが、同時に悔しさが残る作品でした。8カ月間、66回の放送分の『初恋』を撮り終えて、自分の演技力不足からひどい挫折感を経験しなければならなかったのです」

制作関係者も視聴者も、『初恋』におけるペ・ヨンジュンの演技について、その成長を十分に認めていたのだが、当の本人は自分の至らなさを痛感して反省ばかりしていた。

他人から見れば「なぜ、そこまで自分を追い込むのか」と思えるが、それこそがペ・ヨンジュンである。

彼は厳しく自分を見つめ、小さな成功で決して満足したくはなかった。

とはいえ、落ち込んでばかりもいられない。
演技力をもっと向上させたい、という強い意欲をもってペ・ヨンジュンは新たな道に進んだ。

明日に向かって走る

1997年4月28日付け「イルガン・スポーツ」紙が詳しく報道している。

「約8カ月間も撮影に没頭したドラマ『初恋』を終えたペ・ヨンジュンは、虚脱感を克服するために本格的な体力強化に突入した。
彼のスケジュールを見れば、勉強で詰まった小学生の計画表のように殺人的だ。
何も知らない人が見れば、『ペ・ヨンジュンさん、どんな組織に入っているのですか?』と聞いてしまうほどだ。
目を開ければ30分ほどジョギングをして自宅近隣の剣道場で汗を流す。
朝食を食べてから、『演技者は何でも出来なければならない』という信念に基づいてゴルフ練習場へ足を運ぶ。
そしてジャズダンスの個人レッスンを受け、武術ジムで鍛え、フィットネスクラブで1日を終える強行軍だ。
彼は言う「『初恋』を終えて本当に虚ろですが、チャヌは記憶の中に埋めておいて、明日に向かって走らなければなりません」と……。

この記事の通り、明日に向かって意欲満々だったペ・ヨンジュンだが、運悪く大きなケガをしてしまう。

それは、1997年7月18日の出来事だった。

いつも通っている武術ジムでトレーニングをしたあと、ペ・ヨンジュンは急に宙返りがしたくなった。
ジャンプして空中で一回転すると、周囲から拍手が起きるほど称賛されたのだが……。

「もう一回」の声に後押しされて、再び宙返りしたときに、着地に失敗して右足を負傷してしまった。

読書に夢中になる

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自分の運動神経への過信があったのかもしれない。
それが、あだになった。

精密検査の結果、右足首の骨折で全治3カ月の重傷と診断された。

右足には大きなギブスが付けられ、身動きできない生活が始まった。

『初恋』終了後、ペ・ヨンジュンは体力トレーニングを強化して、せっかく引き締まった肉体に仕上げたのに、それも台なしになってしまった。
それでも、寝込みながら木刀を振る、というのが、いかにもペ・ヨンジュンらしい。
歩けないが、腕は自由になるというわけだ。

しかし、それも限界がある。
ペ・ヨンジュンは観念して、ビデオ鑑賞と読書にほとんどの時間をさくようになった。

「それまでは体作りに力を注いでいましたが、ケガでむしろ余裕を見つけました。これまで見られなかった映画、読めなかった本を今こそ楽しんでいます。それに比べると、からだが動けないのは大したことではありません」

それまでのペ・ヨンジュンの人生は、前を向いてひたすら突っ走るものだった。
並外れた向上心を持つ彼は、休む間もなく動くことで何かを得ようと思っていた。

けれど、ケガによってベッド生活を余儀なくされ、少し考えが変わってきた。
何よりも、映画や本によって得られる教養が、彼に新しい世界を示してくれた。
特に、古代エジプトのファラオの一代記を描いた書籍を読んだときは、歴史の奥深さに感動を覚えたほどだった。

演技の向上に必要なこと

もともと、ペ・ヨンジュンは知性派の俳優として知られていた。
たとえば、ある新聞ではこう論評されている。

「ペ・ヨンジュンを代表する魅力は、知性美である。優雅な容姿とシャープなイメージをトレードマークにしている。そして柔らかい。笑うときに弧線を描く目もとほど、調和しているものはないだろう。CM関係者たちも驚くくらい、魅力的な微笑みをもっている。そうした知性美や柔らかさの他にも、男性美であふれている。180センチ、76キロの堂々たる体格は、『私のからだは脂肪だけではありませんよ』という本人のジョークのように、ボリュームのある筋肉で覆われている。見るからに顔と体はまったく一致しないが、そんなアンバランスさがむしろ彼の魅力をさらに際立たせている」

知性美と男性美・・この二つともペ・ヨンジュンの魅力だと論じている。
そういう指摘が的を得ているのは確かだが、ペ・ヨンジュンはケガの療養中に数多くの本を読破する中で、一層教養を高める必要性を感じた。
演技に深みをもたらすのが、知性であり教養であると実感したからである。

<演技の向上に必要なことはすべてやり遂げたい>

そういう信念を持ち、以降のペ・ヨンジュンは時事雑誌から詩集まで幅広く読みこなす読書家になった。

その原点はやはり、ケガの間に身につけた読書習慣である。



第8回 KBS以外のドラマに初主演

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ケガが回復したあと、しばらく休養をとったペ・ヨンジュンは、10カ月ぶりにドラマの世界に戻ってきた。
それが、『裸足の青春』だった。
扮したのは、組織暴力団のボスの息子という出生の秘密を持った青年ヨソク。
警察大学の学生から組織暴力団の後継ぎまで波乱万丈の青春を演じた。

ケガの後遺症

ペ・ヨンジュンはどんな気持ちで『裸足の青春』と向き合っていたのか。
1998年2月17日付けの「イルガン・スポーツ」は、当時のペ・ヨンジュンの心情を細かく報じている。

そのインタビューの発言を引用してみよう。

……「初恋」のときよりも、相当やせたようですね。

「ドラマで演じたヨソクの性格に合うように、5キロ減量しました。いつもは77・5キロの体重が72キロになりました」

……カメラの前に立つことが久しぶりでしたが違和感は?

「初めはカメラレンズだけでなく、その周辺も視野に入らないほど違和感がありました。それでも、うまく転じるのも才能の一つだと思いますし、今では昔の感覚を取り戻していますよ」

……足首がまだ完全ではないとのことですが、野外撮影に支障はありませんか?

「足蹴りなどのアクションシーンは簡単ではありませんが、代役なしですべて消化しました。特に、走る列車に飛び乗る場面では、監督が代役を使おうと言ってくださいましたが、現実感を出すために直接走りました。40~50メートルほどの距離を3回ほど走りましたが、ケガの後遺症からか、かなり痛みを感じましたね」

演出陣との不仲説

……継続してKBSのドラマに出演していますが、最近「脱KBS」宣言をしたと伝えられています。

「KBSで最初の一歩を踏み出したし、KBSで育ちました。これまで、KBSで数多くのドラマに出演してきましたが、あえて移る必要がどこにあるのかと思っていました。しかし、どのみち演技者になるために、放送局が偏っていてはいけないという考えが浮かんできました。今後は良質の作品を優先させる予定です」

……最近演出陣との不仲説が出回っています。もしかしてその影響なのでは。

「ささいな意見の摩擦が不仲説として飛火した模様です。演出者や演技者もみんな、良い作品を制作しようと努力しています。その中で、意見の摩擦が起こることは、十分にありうることだと思っています。外から見るときに不仲として映ったのであれば、それは本当に残念なことです。そして、KBSを離れるという考えがそのためであるという見方があるならば、それに対しても残念としか言いようがありません」

このように、「イルガン・スポーツ」はペ・ヨンジュンのコメントを掲載しているが、ここで気になったのは、「演出陣との不仲説」という部分だ。

韓国社会では、儒教的な長幼の序が重んじられるが、それはドラマの制作現場でも変わらない。
年下の者が少しでも意見を言うと、「生意気だ」と受け止められてしまうのだ。
けれど、良いドラマを制作しようとすれば、出演者が最善の演技をすると同時に、自分の意見を述べ合うことも大事である。

ペ・ヨンジュンもドラマの出来をよくするために、自分の出演シーンについて意見を言うことがある。

その点では、ペ・ヨンジュンは決して妥協しないタイプなのだ。

KBSから離れたペ・ヨンジュン

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ペ・ヨンジュンは妥協しないが、韓国社会ではそれが「年下の者が年上に向かって……」という固定観念で見られて、摩擦を生んでしまうこともある。
それは、ペ・ヨンジュンが生意気だからではなく(むしろ、彼は撮影現場でも謙虚にふるまうことでよく知られている)、ドラマの質を上げるために行なったことなのだ。
それが曲解されてしまうのは、ペ・ヨンジュンも言及したように残念なことだった。

結局、ペ・ヨンジュンはKBSから離れることになった。

ただし、後味がよくなかった。
なぜなら、他の放送局に初めて出ることになったのが、KBS制作ドラマの降番がきっかけになってしまったからだ。

実は、ペ・ヨンジュンは『裸足の青春』の次作として、1998年10月からKBSの『チョンイハク』というドラマに出ることになっていた。

しかし、KBSドラマ局の幹部は「ペ・ヨンジュンが共演者のキャスティングにまで口をはさんでくる」と不快感を示した。
これに対し、ペ・ヨンジュン側は「共演者の決定が遅れて心配していただけ」と表明したが、結局は『チョンイハク』への出演をとりやめる決定をした。

彼は、先に紹介したインタビューの中で、「今後は良質の作品を優先させたい」という強い意思を示していたが、その信念に基づいて行動しようとした。
それが、結果的にKBSを離れることになった。

『愛の群像』に主演

どんな場合にも、ペ・ヨンジュンは精一杯の誠意を見せた。
このときの降番劇についても、きちんと謝罪している。

「本当に申し訳ありません。私の責任です」

きちんと謝罪をすれば、それを容認して関係を修復する……そうした寛容さもまた韓国社会の特徴の一つだ。

事実、ペ・ヨンジュンはその3年後にKBSの『冬のソナタ』に出演している。
もし、ペ・ヨンジュンとKBSの関係がこじれたままだったら、アジアを熱狂に包んだ傑作ドラマが生まれていなかったかもしれない。

果たして、そんなことが想像できるだろうか。

結局、『裸足の青春』の次回作をめぐって紆余曲折があったが、ペ・ヨンジュンが出演したのはMBCの『愛の群像』だった。
KBSで育てられた彼は、初めて他局のドラマで心機一転をはかることになった。

このドラマでペ・ヨンジュンは、魚市場でカニの仲買人として働く一方で、苦学しながら大学に通う学生ジェホを演じた。

ペ・ヨンジュンにとって、演技の多様性に挑む重要な作品となったが、視聴率のうえでは伸び悩み、かならずしも成功とは言えなかった。

けれど、何をもって「成功」「不成功」と判断するかは、厳密には言えない問題だ。
それよりも、この『愛の群像』が画期的だったのは、「ウジョンサ」が誕生したことだった。
これは、インターネットを中心に、「愛の群像」を愛するファンが集まったものだった。
一つのドラマから、熱狂的なファンのグループが大規模に生まれたことは、それまでの韓国にはなかった現象だった。

この「ウジョンサ」は単にドラマを支援しただけでなく、会員が「ジェホのように苦学している若者を助けよう」と決議して具体的にボランティア活動も行なった。
また、視聴率の問題で悩み苦しむペ・ヨンジュンを励まし、新たな勇気を与えてくれた。

俳優冥利に尽きる、とはこういうことなのだろう。
ペ・ヨンジュンはファンの温かい声援を受けて、俳優であることの幸せを心から感じた。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

-愛してる韓国ドラマK-POP-




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