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ペ・ヨンジュン 過去への旅路 9・10

2016’06.03・Fri

ペ・ヨンジュン 過去への旅路 9・10

第9回 映画に初主演する予定だった

『愛の挨拶』でデビューして人気俳優となったペ・ヨンジュンは、その後も『若者のひなた』『パパ』『初恋』に主演。
若者の揺れる心を瑞々しい感性で表現して人気を不動にしていた。
そして、『愛の群像』では、今までにない難しい役を全身全霊を傾けて演じきった。
視聴率はあまりよくなかったが、熱狂的に支持してくれるファンの声援を受け、演技者としても今まで以上の手応えを感じた。

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体力トレーニングに励む

『愛の群像』の出演を終えたペ・ヨンジュンは、いつものように体力強化に精を出していた。

たとえ、長期間の撮影予定がなくても、ただの休養に当てずにジッとしていないのがペ・ヨンジュンである。

彼は常に「今より一歩進んだ自分」でいたいと思った。
トレーニングもその一環なのであった。

1999年8月3日付けの「イルガン・スポーツ」は、「ペ・ヨンジュンは今……」という見出しを掲げてペ・ヨンジュンの近況を伝えていた。

その記事は、詳細なインタビューで構成されていた。
ここに、その一問一答を再現してみよう。

……歩き方がちょっとおかしいようですが。

「左足をちょっとケガしてしまったんです。半月ほどになりますが、からだ作りのためにトレーニングをしていて傷めてしまいました。深刻なものではなく、筋肉がちょっと驚いた程度ですよ。以前にケガしたのは右足だったけれど、今はただ『あいにくだなあ』という気持ちですね(ペ・ヨンジュンは19977月、全治3カ月の重傷を右足に負ったことがある)」

……どんな運動をどれだけしているんですか。

「以前はウェイト・トレーニングでもどんどん重い物を持ち上げていて、そのおかげで筋肉がかなり付いたのですが、最近は軽い物をたくさん持ち上げています。とにかく、しっかりした体型を作っているところですよ」

自分から報酬の要求はしない

……イメージの変身をはかっているわけですか。

「もちろんです。こういう表現が適切かどうかはわかりませんが、今よりはずっと精悍なイメージを与えたいですね」

……スクリーン進出を計画しているそうですが、出演作品は決まりましたか。

「まだ決まっていません。どちらにしても、今年の9月から撮影に入って、来年の1月か2月に公開されるような映画を考えています」

……出演作品の決定が遅れているのは、もしかしてギャランティーの問題のためでしょうか。

「その点に関しては、おかしな誤解があるようなんです。私は今まで芸能界にいても、一度もこちらから『これだけ欲しい』と要求したことはないんですよ。それに、映画界にとって私はヒヨコ同然なのに、自分からそんな要求ができるわけがありません。どの作品が俳優として自分の価値を十分に生かしてくれるのかを考慮しているだけですよ」

以上のようなインタビューだったが、ペ・ヨンジュンの重要な発言があった。
「9月には撮影に入る映画を考えている」という部分だ。
つまり、この発言の1カ月ほど後に映画撮影を始める計画を立てていたということである。

それだけ、『愛の群像』の撮影終了後のペ・ヨンジュンは映画進出を真剣に考え、それなりに作品選択に取り組んでいたわけだ。

しかし、残念な噂が広まっていたのも確かだ。

大型ドラマの出演依頼

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それは、「ペ・ヨンジュンは出演料を上げるために作品選択を遅らせている」というものだった。
テレビドラマで実績を上げながら映画界に一向に転身しなかったので、そういう噂が出てしまったのだが、ペ・ヨンジュンがギャランティーのために意図的に作品選択を遅らせるわけがない。

何よりも、「いくらテレビドラマで実績があっても映画界ではヒヨコ同然だ」と彼は自覚している。
それほどに謙虚なペ・ヨンジュン……慎重すぎる性格が、いらぬ噂を生む結果になってしまったようだ。

ペ・ヨンジュンは本気で「9月に映画撮影開始」と考えていたのだが、結局のところ、その計画は実現しなかった。

彼は、持ち込まれた多くのシナリオを読みこなしたが、自分が納得できる作品にめぐりあわなかったのだ。

映画界への転身は大きな夢だったが、時期尚早と考えざるをえなかった。
気が進まない作品に無理に出るようなことはしたくなかった。

そのかわり、テレビ界から魅力的な出演依頼を受けた。
SBSが開局10周年を記念して制作する大型ドラマ『警察特攻隊』の主人公に誘われたのだ。

このドラマは、テロの鎮圧を任務とする特殊な警察隊員たちの愛と葛藤を描くもので、共演者にはペ・ヨンジュンが『若者のひなた』『裸足の青春』で共演したイ・ジョンウォンや、若手スターのキム・ソクフンが予定されていた。

社会人入試に合格

ペ・ヨンジュンは出演依頼を快諾し、早速、実際の警察特攻隊に体験入隊して意欲をみなぎらせた。

そんな矢先に、新たな朗報が届いた。

1999年11月12日、ペ・ヨンジュンは名門の成均館(ソンギュングァン)大学映像学科に合格した。

彼は自己推薦制度を活用して同大学を受験していたのだが、芸能分野で優れた能力を発揮していることが評価されて、見事に望みをかなえたのである。

高校を卒業したあと、二度にわたって大学受験に失敗していたペ・ヨンジュン。
20代後半になって大願を成就させたわけであり、その喜びはとても大きかった。

「10年ぶりにまた学生に戻ることになりますが、本当にうれしいですね。『今こそ学ぶときだ』と思って、成均館大学の社会人入試に応募したのですが、こういう機会を与えてくださった大学に対して心から感謝します」

大学の授業は2000年3月から始まる予定となった(韓国では学校の新学年は毎年3月から始まる)。
ただ、俳優との両立は困難が予想されたが、ペ・ヨンジュンはきっぱりと言った。

「学生と俳優のどちらに優先順位をつけるというより、すべてに対して最善を尽くしたいと思っています。どちらにしても、映像部分に対して幅広い知識を習得できれば、演技にも深みが出ると期待しています」

大学では、音楽か美術の同好会活動もしたいと抱負を語るペ・ヨンジュン。
大学生活への期待は高まるばかりだった。



第10回 『ホテリアー』の成功

新作『警察特攻隊』の主演が決まり、念願の大学合格まで果たしたペ・ヨンジュン。
1999年の12月から翌年1月にかけては、のんびりと国内旅行も楽しんだ。
予定も立てずに一人でブラリとドライブに出掛けるのが好きだった。
特に、風光明媚な場所が多い江原道(カンウォンド)によく遠出したという。
そんなふうに休養期間を過ごしていたのだが、安寧の日々が一転する出来事が起こった。

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制作陣と対立

実は、『警察特攻隊』の撮影開始を前にして、制作陣とペ・ヨンジュン側の間でいくつかの摩擦が表面化したのである。

制作陣の言い分は、「ペ・ヨンジュンは他のテレビドラマと掛け持ちしようとしている」「ペ・ヨンジュンが演じる役について、そのキャラクターの修正を求めてきた」「コサ(作品の成功を祈願する儀式)にも一人だけ欠席した」というもの。
かなり不信感が高まっている様子だった。

実際、ペ・ヨンジュンに対してはMBCからドラマ『悪いやつら』への出演依頼が来ていたし、彼がその出演に意欲を持っていたのは確かだ。

しかし、ドラマの掛け持ち出演はどの俳優も普通に行なっていることで、「特に問題がない」というのがペ・ヨンジュン側の立場だった。

しかも、「脚本が出来上がる過程で自分が引き受ける役が当初の約束から違ってきている」という不満も生じていた。

もっと具体的に言うと、演じる人物の重要度が低くなっていたのだ。
これは、作品選定に厳格なペ・ヨンジュンとしても、受け入れがたいことだった。

騒動となった出演辞退

小さな摩擦がマスコミ報道によってどんどん大きくなり、修復不可能なところまで両者の意見は食い違ってしまった。
やむなく、ペ・ヨンジュンは『警察特攻隊』の出演を辞退することになった。

この騒動によって、「ペ・ヨンジュンは扱いにくい俳優」という印象が広がったのは確かだ。
放送関係者の一人は「人気というのは瞬間的なものだから、俳優として生き残るためには、演技のうまさと同様に、人間的な成熟度も重要だ」と語った。

また、マスコミの報道には制作側に寄ったものも多く、ペ・ヨンジュンが窮地に陥ったのも確かだ。

騒動のずっと後に、ペ・ヨンジュンはこう語っている。

「マスコミの報道には偏った部分がありました。私が『警察特攻隊』の出演をとりやめたのは、最初の約束が守られなかったからです」

この約束とは、演じるキャラクターを指している。
企画から脚本執筆に移る過程でキャラクターの重要性が変わってしまったことが問題だという認識なのだ。
しかし、マスコミは「ペ・ヨンジュンは生意気だ」という論調が多かった。

「もはや俳優として復帰できないのでは……」

そんな不安に苦しめられたペ・ヨンジュン。
救いは、大学の授業だった。
彼はすべての俳優活動を休止して、ひたすら勉学に励んだ。
その成果で、「オール優」に相当するような優秀な学業成績をおさめた。

『ホテリアー』が決定

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2000年はひたすら学業に専念したペ・ヨンジュンは、2001年に入って本格的にドラマの世界にカムバックした。

1年10カ月ぶりの復帰作となったのは、MBCの『ホテリアー』だった。
このドラマでペ・ヨンジュンは冷徹な企業ハンターのシン・ドンヒョクに扮した。

久々にカメラの前に立ったとき、ペ・ヨンジュンは緊張で震えがきたという。
数々のテレビドラマで堂々たる主役を演じてきた彼にしても、1年10カ月というブランクは長かったのである。

しかし、戻ってきたペ・ヨンジュンを見て、多くの芸能記者たちは「彼も随分と変わったなあ」という印象を持ったという。
まるで、肩に背負っていた重しが取れたかのようだった。

ペ・ヨンジュンもこう語る。

「出演作の選定について厳しかったマインドが、かなり変わりました。今後は、演技の中に徹底的に自分を没入させて、また一から始める気持ちです」

彼は自分自身でも「変わった」と口にしたが、それは外見にもよく現れていた。
学業に専念している間に体重が82キロまで増えていたが、『ホテリアー』の出演を機に減量に努め、わずか2カ月で74キロまで減らした。

何よりも、『ホテリアー』で演じるシン・ドンヒョクという人物はシャープな切れ味を発揮するキャラクター。
その役に合わせて、からだから贅肉をそぎ落としたのだ。

その減量方法が徹底している。
いつもながらのウェイト・トレーニングを重ねたうえで、ダイエット食事法にも取り組んだ。
特に、午後6時以降は、水も飲まないほどだった。
こうして、自分なりの準備を整えて、ペ・ヨンジュンは撮影に臨んだ。

キム・スンウとの友情

撮影が進むほどに勘を取り戻していったが、「演技中の視線をどこに置くか」という問題では苦労が多かった。

ブランクが長かったせいか、どうしても視線がぎこちなくなってしまう。
さらには、撮影直前に書き直されるシナリオにも苦しめられた。

けれど、苦労が多ければ多いほど、気持ちが充実してやり甲斐が大きくなるのを感じた。
やはり、撮影現場はペ・ヨンジュンが「今まさに生きていること」を痛感させてくれるところだった。

「先輩や同僚に本当に助けられました」

ペ・ヨンジュンは心からそう思った。
特に、共演のキム・スンウには精神的に支えてもらった。
この先輩俳優の励ましが、本当に大きな力となった。

キム・スンウの役は、ホテルの総支配人ハン・テジュン。
ホテルの買収を狙うシン・ドンヒョクとことごとく対立する立場であり、恋のライバルでもある。
ドラマの中で徹底的に対立した二人だが、撮影現場を離れれば人間的な信頼関係があった。
それがまた『ホテリアー』の成功の原動力になった。

キム・スンウは、ペ・ヨンジュンについてこう語る。

「彼は、想像よりもずっと自由で男らしいですね。初めて会う前は『いつも格好よく着こなしてオシャレな言葉を使う人だ』と思っていたのですが、気軽に冗談を言うような気さくな性格なので驚きました。以来、二人で酒を飲むようになって親しくなりました。そんな中で、私はペ・ヨンジュンが男らしい人間であると実感しました。義理堅いところも大いにありますね」

共演者からこれほど信頼されれば、ペ・ヨンジュンもさぞかし気分よく撮影に臨めただろう。
出演陣のチームワークが良く、『ホテリアー』は内容的にもすばらしい出来栄えになった。

ペ・ヨンジュンも復帰作を見事に成功させて、さらなる成長を遂げていった。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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