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中高年はなぜ若者の韓流ブームを…

2020’05.19・Tue

日本の中高年はなぜ若者の韓流ブームを全く理解できないのか

ネット上で話題になりやすい国、韓国。
歴史・政治の議論に加え、最近は新型コロナウイルス対応でも何かと比較され、“炎上”もしやすい。
中でも世代間で評価がくっきり分かれるのが「韓流ブーム」だ。

 「ヨン様(ペ・ヨンジュン)」が流行った第1次韓流ブームも今は昔。
BTSなどのK-POPや韓流コスメを楽しむ若年層の感覚に、ピンとこない中高年の人も少なくないのでは。
どうして今の韓国コンテンツは日本の若年層に受け、そして上の世代では受けづらいのか。

 そこで、韓流ブームに関する日本の「世代間の断絶」について、朝鮮半島研究の第一人者である政治学者、木村幹・神戸大学教授と、毎日新聞社で韓国の取材を長年手掛け、『反日韓国という幻想 誤解だらけの日韓関係』(毎日新聞出版)を執筆した澤田克己・毎日新聞論説委員に対談してもらった。
前後編で迫る。

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日本の若者も熱狂する韓国のアイドルグループ、BTS(防弾少年団、ロイター提供)

韓国側が「狙った」訳でもない韓流

――一口に韓流と言っても複雑です。
澤田さんの『反日韓国という幻想』(毎日新聞出版社)によると、第1次韓流ブームの端緒は2003年の『冬のソナタ』で、ドラマ・俳優が中高年に人気になりました。
第2次は10年ごろ、少女時代などのK-POP人気。しかしこれも衰え、今の第3次韓流ブームはSNSを起爆剤とした商品やアイドルに若年層が飛びついています。
特に今のブームは、記憶が“ヨン様止まり”な上の世代からすると分かりづらいですね。
こうした世代の断絶をどう見ますか。

澤田: 第3次韓流ブームで流行っている物は、基本的にK-POPやコスメです。
基本は若い人向けで、もともとおじさん・おばさん向けの商品ではない。
しかも、日本のエンタメ産業はもう(若年層の)人口が少ないので、10代を相手にはしていません。
そこに韓流がターゲッティングしているのだから、(受けるのは)当たり前だと思います。

木村: とは言いつつも、第1次韓流ブームの時も、女性たちが韓国に行って大量にコスメを買うような動きもありましたよね。

 もっと言えば、韓国も少子高齢化なわけです。
(現地で)中高生のような若い女性を狙った物に、(韓国の若い)彼女たちが別に食いついている、という図式は単純に過ぎるかもしれない。
例えば、BTSが韓国で若い人だけをターゲットにしているかどうかは怪しいと思います。

 これらの韓流コンテンツが今の(日本の)中高生に受けているというのは、韓国側が特に狙ったというより、日本側の要因も大きいのではと思いますね。

若者と中高年で韓国に見る「色」が違う

木村: 第1次韓流ブームと今が明確に違うのは、今韓流に飛びついている子たちが「2010年以降の韓国」しか見ていない、という点です。
一方、第1次のブームは日本人からすれば、ノスタルジックで“後ろ向き”な部分が受けていた。

――第1次ブームでは、「冬ソナ」のような韓国ドラマや楽曲に日本人が一昔前の“古き良き日本”を重ねていた、ということですね。

木村: 一方で、BTSは(日本の)年上の人からすると「これは韓国(的)ではない」と見える。
しかし、今の中高生からすればこれこそが韓国な訳です。

 今の中高生と上の世代は、韓国に見ている“色”が違うと私は思います。
僕らの世代からすると「緑」とか、「灰色」とまでは言わないけれどカラフルではない。
年配の人々は、(韓国を)良いという人も悪いという人も、「伝統的な韓国」が見たいのです。

 逆に今の若い人たちは韓国がカラフルに生き生きと見えている。
例えば女性だと、色白でスラッとしていて小顔、みたいな……。
また、日本で受ける韓国の物もとにかくカラフルです。
「電球ソーダ(電球型の容器に色鮮やかなドリンクを入れたスイーツ)」もはやりましたし。

澤田: この感覚の違いは大きいですよね。
ある韓国通のジャーナリストが書いていましたが、「韓国は自分の手のひらに載せてためつすがめつ眺めるような対象だったのが、最近はそうでなくなった」と。

 1970~80年代から韓国を見てきた世代は、右も左の人もそれに近い視点があったと思います。
でも、今の若い人にとって韓国は、「手のひらに乗る」ような物ではないんですよ。

ジャニーズ、AKBと並ぶK-POP

木村: 例えばうちの娘に聞くと、ジャニーズ、AKB、K-POPと“横並び”なのです。
AKBは可愛らしい感じで盆踊りみたいに踊ってるけど、K-POPはすらっとしていてキレッキレのダンス。
韓流アイドル自体が1つのジャンルになっている。

――日本の若い子たちが「ジャニーズが好きか、それともEXILE派か」と言うのと、韓流アイドルも同格だと。

木村: そんな感じですね。
特に女子の間で浸透しているようですよ。
一方で同じ中高生でも男子にはあまりハマってないみたい。
AKBの方が人気なんでしょうね。

澤田: AKBの方が素人っぽい。
完成されたアイドルではないですよね。
逆に(日本の中高生男子にとって)韓流アイドルはちょっと近寄りがたいイメージなのかもしれません。

若者にとって韓国は「カッコいい」
――確かに韓流アイドルもコスメも、色味やメリハリがかなりはっきりしていてまさしく“カラフル”です。

木村: 韓国では「外貌(ウェモ)」と言うのですが、韓国人はお菓子でも何でもカタチを重要視するんですね。見た目から行くから、(商品が)インスタ映えなどの方向で受ける。

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木村幹(きむら かん)。神戸大学大学院国際協力研究科教授。1966年大阪府生まれ。専門は比較政治学、朝鮮半島研究。

 こうした動きは5~6年前には既にあったと思います。
うちの大学院生で何年か前、「どうして韓国がカッコよく見えるのか研究したい」と言った人がいましたね。

澤田: 実は、1990年代の終わりに大学の先生と話していても、似た印象を受けました。
当時学部に入ってくる3年生は、ソウル五輪より後のことしか知らなかったそうです。
軍事政権やクーデターといった韓国の暗いイメージは、ソウル五輪の前で終わってしまっているわけです。
90年代の終わりには既に(そうしたイメージが)出てきたんだなと。

コンテンツ力落ちた日本のテレビ

――日本の若年層が、古くも暗くも無い「カラフルな韓国」に魅了されているのは理解できました。
ただ、冒頭にも出たように日本企業が若年層向けコンテンツを作りだせていない要因もあるようですね。

澤田: 例えばテレビ。
僕は2009年に(当時赴任していたジュネーブから)帰国しましたが、日本のテレビ欄にすごく違和感を持ちました。
2時間番組、しかもバラエティーばかり。
テレビ局の人からも聞きましたが、やはりお金を掛けられないからでしょう。

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澤田克己(さわだ かつみ)。毎日新聞論説委員。1967年埼玉県生まれ。同社政治部などを経てソウル特派員を計8年半、ジュネーブ特派員を4年務める

 日本のテレビなどはコンテンツの力が落ちている。
一方で韓国(企業)はしっかりお金をかけている。
仕方のない面ではありますが。

木村: テレビで言うと、地上波が強い国というのは日本くらいしかないですよね。
米国ではもともと(力が)無く、欧州、そして韓国でも無くなっていった。

 そして日本では、いまだにエンタメの作り方が地上波の時間枠に当てはめられているように思えます。
今の大学生の多くは、下宿している子などテレビを持っていないですよ。
ネットを見ているので買う必要が無い。
テレビや新聞を見ない大学生以下の人たちは、当然(テレビなどの)ターゲットには入ってないのでしょう。

澤田: 要は、(メディア内の)新陳代謝が日本では少ないのでしょうね。

韓流ブームは一種の「日本のグローバル化」

――テレビに代表されるオールドメディアが日本では中途半端に生き残ったからこそ、若者向けコンテンツを作ろうとしないと。

木村: 一方、韓国では新聞社など古いメディアの衰退がもともと激しかった。
アイドルが典型的ですが、(ある意味で)著作権を完全に“放棄”してますよね。
ファンが楽曲を買うとしてもダウンロードです。
CDを売るビジネスは事実上止めていて、ネットで(曲が)垂れ流されていてもいいから、ドームコンサートなどでドーンともうける。

――逆に日本では、CDの「握手券商法」に代表される旧来のビジネスがまだ生き残っています。
ジャニーズなど、本来当たり前なのですが画像や楽曲の著作権管理に厳格です。

澤田: 韓国(企業)の人に聞きましたが、「日本の地上波ドラマは、ジャニーズだと人気出るからドラマに起用しますよね。でもその時点で、海外での販売はアウト。そういう商売とうちらは違いますから」とのことでした。

木村: 韓国では著作権が軽視されているという問題点はありますが、あくまでその上に立ったビジネスな訳です。
そして、日本の中高生にとってもスマートフォンがあれば韓流コンテンツは楽しめてしまう。
でも、ジャニーズの方は「買わなくて」はいけない。
お金がかかるので、(こうした日本コンテンツを)年上の人しか楽しまなくなる、となっていくのではないでしょうか。

――日本の若年層マーケットに韓国コンテンツが入り込み、日本勢がうまく刺されていないのはビジネス上の課題ではあります。
ただ、若者カルチャーが国境を越えて共有されているのは、もっと日本の上の世代も注目しても良いと感じます。

澤田: 文化の共有とはなかなか難しいものです。
果たして既存の文化、例えば政治文化のような「物の考え方」が(日韓で)同世代同士で同じかというと、かなり違います。
ただ、韓流といったコンテンツでは(国の差より)世代差の方が大きいのでしょうね。

木村: ただ、日本の10代が見ている韓国と、韓国の10代が見ている韓国がだいぶ違う点はあると思います。
第1次韓流ブームで、ペ・ヨンジュンがあたかも韓国を代表するスターだと日本人がみんな勘違いしたのと同じで。
今も日本(コンテンツ)勢は韓国に入りようがなく、向こうの人は関心を持たない、という構図ですね。

 ただ、韓国アイドルが日本に入ってきていることは、「日本のグローバル化」と言えるのかもしれない。
一方で言えるのは、(日本の若年層は)「韓国の物だから見たい」と思っているわけではない、ということです。
そんなことは全然ない。

――韓国を見つめ続けてきた往年の世代とは、興味の持ち方が根本的に違うということですね。
後編では、逆に日本の中高年世代における韓国のイメージが「なぜか昔で止まっている」問題について聞きます。

-ITmedia-



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